かなり“家族”の映画です『ザ・ファイター』
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丸の内ピカデリーほか全国順次公開中
最初に言っておきますが、実在のボクサーの異兄弟、
ディッキー・エクランドとミッキー・ウォードを描いた
『ザ・ファイター』は、ボクシング映画ではありますが、
それだけじゃありません。
家族との関係の再構築と、ドラッグからの再生を描いた物語でもあるのです。
女性の鑑賞ももちろんOK。
兄のディッキーをクリスチャン・ベール、
弟のミッキーをマーク・ウォールバーグが演じています。
クリスチャン・ベールはアカデミー賞助演男優賞を受賞。
髪を抜き、歯も抜いて歯並びを変え、
13kg減量したことはよく伝えられているかと思います。
まあ、彼は圧倒的な存在感。受賞も納得。
そのディッキーはかつて、マサチューセッツの貧しい町ローウェル中の期待を一身に背負うボクサーでした。
伝説といわれるボクサー、シュガー・レイと対戦した際にダウンを奪った、ということ
(だけ)が自慢。
天才肌タイプで、陽気でカリスマ性があり、町の人からも人気なのですが、
今ではすっかり落ちぶれてしまって、ドラッグの常習者です。
その彼をTVドキュメンタリーのスタッフが追いかけています。
一方、ミッキーは、そんな兄にあこがれて、小さな頃からボクシングを仕込まれてきた、どちらかというとおとなしくて、地道な努力家のタイプ。
彼にとって、ディッキーの言うことは絶対だったのでしょうね。
そんなミッキーをマーク・ウォルバーグが静かに抑えて演じているのがまたいいです。
そして、忘れてならないのがメリッサ・レオが演じた彼らの超・過保護な母親。
『フローズン・リバー』でアカデミー賞主演女優賞ノミネートをへて、
今年、ついにこの作品で助演女優賞を受賞したメリッサ・レオが
老けメイクで、何とまあうっとうしい(!)母親を演じています。
私も息子がいますけれど、
これほどまでに盲目的な母親ではないです。。。と思います。
シュガー・レイからダウンを奪ったディッキーを英雄視していて、
何かとかばったり、たまり場に乗り込んだりもして。
ジャンキーなのに、弟のトレーナーとセコンドをやらせている。
そして、ディッキーもこの母親には頭が上がりません。
この2人が、ファイトマネーのためだけに試合を組むので、
ミッキーは次第に勝利から遠ざかってしまうのです。
そんなミッキーを支えるのが、
これまたアカデミー賞助演女優賞ノミネートのエイミー・アダムス演じる恋人。
だって、彼らのほかに女兄弟があんなにいるのに(しかもすごい強烈!)、
誰もミッキーの味方はしないんだもの。
み〜んな、母親の言いなり。
それも貧しさゆえ、金銭のためなのかもしれませんけれど。
愛した人が、家族のせいで好きなことを思うようにできないとしたら、
ここはひとつ、私がガツンと強気に出るしかない、という女性を
エイミーはいい感じに演じています。そんなやや虚勢を張ったような役回りは
彼女にとても似合っていたのではないかと思います。
彼女の作品はよく見ますが、
『サンシャイン・クリーニング』『ジュリー&ジュリア』よりも好印象。
そんないろいろな家族とのしがらみや葛藤があり、
しかも、ディッキーはドラッグでついに逮捕という中で、
ミッキーは最後の世界タイトルマッチに至るわけです。
実話なので、ラストはわかってはいるのですが、
それでも、そのプロセスには、ぐぅっときます。
そう、そう。
ボクシングといえば、患者と医療者の関係がボクサーとセコンドの関係に例えられる
ことがあります。
実際に闘うのは患者でも、
セコンドは体調を整えさせ、士気を高めさせ、作戦を立てる。
打たれ続けて落ち込んでいれば、ゲキを飛ばして励ましたり、
冷静な判断のもとに作戦の変更を思案したりする。
セコンドはリングに上がらなくても、ボクサーにとっては勝利を左右する運命共同体のようなものですものね。
そのセコンドが、やっぱりひとりよがりで、怠惰で、自分のことばっかじゃ
勝てないわけですよね。
あ、それは患者と医療者だけじゃなくて、
親子にも、夫婦などにもいえるなあと思ったりもします。
・ザ・ファイター@ぴあ映画生活
・Twitterでも時々つぶやいています @uereiy
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マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベイル、
エイミー・アダムス、メリッサ・レオ出演
デヴィッド・O・ラッセル監督、
110分、2011年3月26日公開
2010,アメリカ,ギャガ
(原作:原題:The Fighter )
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