メード・イン・ジャパン『トイレット』よ、永遠に。
かなり面白く、見ました。泣いて、笑った。
「ばーちゃん」という日本語が、カナダのとある田舎町で、
あんなにもやさしく、あったかく響くなんて。
『かもめ食堂』『めがね』『マザーウォーター』など、
独特の空気感とセンスを持つ荻上直子監督の作品で、
ばーちゃんは、荻上作品には欠かせないミューズのもたいまさこさん。
「やっぱり猫が好き」からのファンです。
また、もたいさん以外はすべて外国人のキャストというのも面白いです。
ほっとんど台詞らしい台詞はないのですが、
例えば『ソーシャル・ネットワーク』とかはしゃべってばかりなので、
こういう静かなのも、いいよなあと思います。
ぽかぽかとした日だまりにいるとき、ゆっくり時が流れていくような
春らしいテンポとでもいいますか。
物語はママが旅立つところから始まります。
ママが遺していったものは、
小さなおうちと、「センセー」という名の猫、
3人の子どもたち。
長年、引きこもり状態の長兄モーリーは
訳あってパニック障害になってしまい、外に出ることが難しい。
末っ子のリサは大学生。詩を選考しているのかな。モーリーと一緒に住んでいます。
言いたいことは割とはっきり言うほうなのですが、心にイライラを抱えている感じがします。
次男のレイは日本のアニメやプラモデルが大好き。欧米では最近、こうした方、多いみたいですね。
1人暮らしをしていたのですが、モーリーとリサが住む家に戻ってきます。
日常を何事もなく、ただ淡々と過ごすことが人生、みたいな人。
そして、ばーちゃん。
ママが生前日本から呼び寄せたということで、ずっと娘の看病していたらしいのですが、
その死後は部屋にこもってひと言も話さないのです。
というより、どうやら英語は分からないみたい・・・。
ばーちゃんに絡んでくる、3人兄妹のキャラのバランスが、とてもいい感じです。
モーリーは、ママの形見のミシンをばーちゃんに直してもらい、
自己に目覚めていきます。
リサは、ばーちゃんとDVDを見ながら、
自分を表現できるのはエアギター (´艸`) しかないと確信します。
だけど、レイは、あまりこのばーちゃんのことを知らないからか、
ばーちゃんの行動がいちいち気になってしまいます。
朝、必ずトイレを占領してしまうばーちゃんは、
トイレから出ると「はぁ〜っ」と深いため息をつくのです。
「何でだろう?! うちのトイレに何か問題が?」
と理系なレイは思います。
それに、本当に自分たちのばーちゃんなのかも怪しんで、
DNA鑑定をしようとする始末。
それでも、言葉の通じないばーちゃん。
ただ、センセーといすに座っているだけでも、
どこか仙人のように、兄妹のこころの機微を感じとっていたんだと思います。
何もしゃべらなくても、“言葉”は持ってるのが、ばーちゃんなのです。
私は思いました。
笑いながらも、すっと涙がこぼれるこの感じ、決して嫌いじゃありません。
カタルシスがだなあと、この映画が大好きになりました。
それと、実際はどうだか確認はしていないのですが、
飼い猫を病院に連れていける、カナダの病院の懐の大きさもすてき。
「においをかぎたい」という気持ち、とても分かります。
最後にーーーーーーーーー
日本のトイレは、マドンナが買って持ち帰ったほどの、
世界に誇るアメニティーを持ったトイレです。
今は節電モードにしてはいますが、
これからはおそらくコンセントを抜くことになるでしょう。
画期的なトイレも、今はがまん。
そもそも、こうしたトイレに始まり
至れり尽くせりのアメニティーにすっかり慣れてしまった私たちは
もう一度、そのライフスタイルを見直す時期に来ているのかもしれません。
被災地の皆さんのトイレ事情をかんがみると、
胃袋がきゅっとしまりそうです。
日本のトイレットよ、永遠に。
一日も早い復興をお祈りしています。
・Twitterでも時々つぶやいています @uereiy
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