明日、観に行く映画2『ブラック・スワン』
★★★★★
優等生からの脱皮。黒鳥も演じきるナタリー・ポートマン
引き込まれ度、衝撃度、非現実度は『告白』か『母なる証明』に匹敵、
いやいや、それ以上でした。
引き込まれるというよりも、いや応なしに
ナタリー演じるニナの妄想の世界に取り込まれるんです。
どこまでが現実なのか、区別がつきません。
『エンジェル・ウォーズ』は、いわば端から見てるような感じの妄想ですけれど、
こちらは、一緒に疑似体験してるかのような感覚。
鑑賞後は、異世界に行って、帰ってきたみたいな気分でした。
戻って来られてよかった。本当、そう思いました。
リキんで観ていた分、その後の解放感もどっと来ましたが、
あれも一種のカタルシスなのかもしれません。
ナタリーの体当たり入魂演技と
映像と音楽によるたたみ掛け
<attention!若干、ネタバレ>
ニナは、元バレリーナであるママからの寵愛と熱烈なサポートを受け、
一心にバレエだけに取り組んでいます。
20代後半だと思いますが、あの状態はやはり奇妙。
この母からの圧力が、また、心病む1つの原因ですね。
そして、役へのプレッシャー。
あこがれていたものを実際に手に入れてしまうと、
果たして、自分には分相応なのかと思ってしまうのは、
だれにでもあることです。
ここで、私はできるのよ、すごいのよ、と自信たっぷりに思えればいいのですが。
今の日本の多くの子どもたちと同じように(!?)
自己肯定感をいまひとつ持てずにいるニナ。(これも親子関係が影響か)。
しかも、自分と正反対の、官能的で、挑戦的な黒鳥を演じなければいけない。
今まで優等生だったのに、思うとおりに演じられないジレンマが生まれます。
目の前には、まさに黒鳥そのもののリリー(ミラ・クニス)がいる。
すごく、すごく気になる存在。嫉妬します。憧れます。
それが度を超えてしまって……。
ニューヨーク・シティ・バレエ団で主役を張るってことが
どれほどのプレッシャーなのか、私なんかには想像もつきません。
しかもチャイコフスキーの名演目「白鳥の湖」ですから。
バレエって、本当に白鳥みたいだなと思うんですよね。
華麗な舞台で、可憐で優雅に踊っているように見えても、
実は水面下では、その動きを止めたら命にかかわる、みたいな。
光と影、それは結局、表裏一体ということ。
レッスンはきつい、ライバルとのせめぎ合いもある。
食事も制限しなければいけない。自由に遊べない。
表現者でありながら、とても抑圧された表現者なのではないかと思います。
この映画もそんな感じです。
その抑圧が、一気にクライマックスへと解放されていくのです。
ナタリー・ポートマンの、あの小さな体から、魂が絞り出されたかのような演技。
感服しました。
どうぞ元気なお子を産んでください。
また、『レスラー』『レクイエム・フォー・ドリーム』の
ダーレン・アロノフスキー監督の演出ぶり!
『ファウンテン 永遠に続く愛』(ヒュー・ジャックマン主演)のときは、
興味深い題材なのに、おいおい(゚ー゚; ちょっとちょっと、
という感じだったので、前作、今作と改めてすごい監督だなと思わされました。
ミラ・クニスもこれから引っ張りだこのようですね。
あと、『17歳のカルテ』『リアリティ・バイツ』世代の自分としては
ウィノナ・ライダーの堕ちぶりも存在感あり。
もう一度観るかどうか、あの感覚に立ち戻るのが少し怖いので、思案中です。
子ども(♂)の同級生や友達のおうちには
バレエに通っている女子たち、たくさんいますけれど、
『ブラック・スワン』はR15指定です。
できれば、個人的にはもうちょっと大きくなってからの方が
いいかな、という気もしていますが。
・ブラック・スワン@ぴあ映画生活
・Twitterでも時々つぶやいています @uereiy
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(英題:Black Swan)
----これは大興奮で帰ってきた映画だよね。
「うん。クライマックスなんて、もうただただ唖然。
ぼくなんて、こういう瞬間を味わいたいがために
映画を観ているようなものだから、
立ちあがってブラボーなんて
ガラにもないことをやりたかったくら...... [続きを読む]
» 『ブラック・スワン』 [・*・ etoile ・*・]
'11.04.28 『ブラック・スワン』(試写会)@朝日ホール
これは見たかった! 全米公開当時から気になってて、ずっと待ってた。試写会もあんまりやってないみたいで、唯一応募したのもハズレ(涙) はずれてガッカリtweetしたら、お友達のともやさんから1人で行くから一緒に行く?と返信が! もちろん行きますぅ! 当日、共通のお友達のmigちゃんと猫目カメラマンのムラくんも合流して4人で鑑賞!
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「ニューヨークのバレエ団に... [続きを読む]
» ブラック・スワン / Black swan [我想一個人映画美的女人blog]
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まさに、このバレリーナ、ナタリー・ポートマンが演じるためにあるような、
他の女優じゃちょっと考えられないくらい見事にハマり役アカデミー賞主演女優賞受賞も納得。
昨日書いた「レクイエム・フォー・ドリーム」...... [続きを読む]
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採点は、★★★★☆(5点満点で4点)。100点満点なら85点。
ざっくりストーリー
ニナ(ナタリー・ポートマン)はニューヨーク・シティ・バレエ団のバレリーナ。技術は完璧で優等生タイプの女性。ニナを産み引退した、元バレリーナでステージママ的な愛情の持ち主の母親エリカ(バーバラ・ハーシー)と一緒暮らしている。
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こんばんは。
行って戻ってこられた…
まさに、そういう映画でした。
でもこれはこの監督の特徴。
それを最も強く感じたのは
『レクエム・フォー・ドリーム』でした。
投稿: えい | 2011年5月17日 (火) 21時55分
おはようございます☆
ツイッターフォローしました。コメントありがとでした
ブラックスワンも記事書いてるので、レビュー書かれたら感想お待ちしてますね。
投稿: mig | 2011年5月12日 (木) 09時37分
こんばんは。
ほんとうに「戻ってこれてよかった」という、
向こうの世界に引きずり込まれる映画体験でした。
そういう意味でも同じ監督の『レクイエム・フォー・ドリーム』と対に…。
でも、こちらは
おっしゃるとおり、
クライマックスに向けて解放されていくところが嬉しいです。
投稿: えい | 2011年5月12日 (木) 00時44分
ナタリーの演技に圧倒された作品でした。
確実に彼女の代表作になるでしょうし、この作品で彼女は
また一皮向けたように思います。
ウィノナ・ライダーは最近あんな感じの役が多いですね^^;
投稿: KLY | 2011年5月12日 (木) 00時05分