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2011年7月17日 (日)

それでも、救いたい『いのちの子ども』

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いのちの子ども

★★★★(4.5)
酒井駒子さんのイラストがいいですよね!


今も続くイスラエルとパレスチナの紛争の中で
1つのいのちを救うべく、立ち上がった人々を追う


映画『いのちの子ども』公式サイト


パレスチナ自治区のガザで、長年取材を続ける
イスラエル人のジャーナリスト・シュロミー・エルダールによるドキュメンタリーです。


日本の震災・原発の問題、リビア情勢、異常気象など、
昨今は内外で本当いろいろなことが起こり、目下進行中ですが、

何年も何年も続いているイスラエルとパレスチナの関係の中で、

いのちというもの、本当に守るべきものは何かを問いかけています。


民族と宗教による対立という、日本からしたらなじみの薄いテーマでも、

とても普遍的で、“今このとき”の日本にも通じるような

ごく当たり前の大切なメッセージがある、というふうに思える映画でもあります。


そう。けっして、遠くはない。


今年は例年より何かとドキュメンタリーを観る機会が多いのですが、
その中でも、今のところベスト3に入る秀作だと思います。

映画『いのちの子ども』公式サイト


この映画の本当のメッセージは
赤ちゃんを救ったところから始まる

<ネタバレ>


ガザ地区には、感染症をくり返す生後4カ月の赤ちゃんを
診ることのできる病院はありません。
これは手に負えない!となって、イスラエル側の近代的な病院に運ばれてきます。

この病院が“イスラエルとパレスチナ自治区の架け橋だ”というようなことを
イスラエル人のソメフ医師は言います。


その赤ちゃん・ムハンマドは、先天性の免疫不全症という難病でした。
免疫系の不全なので、感染症にかかりやすく、下手したら肺炎や髄膜炎などで
いのちを落としてしまうおそれがあります。

ムハンマドの両親は、すでに2人の娘を同じ病気で亡くしていました。

最善の選択は、近親者からの骨髄移植。そこで、ソメフ医師が、
手術に必要な5万5,000ドルを集めるため、ジャーナリストのエルダールに
テレビで寄付を募ることにしたのです。


寄付は、紛争で息子を亡くしたイスラエル人から得ることができました。
しかし、兄弟や親戚をガザ地区から呼んで、適合検査をしなくてはなりません。
それがどれほど困難なことか。。。

しかも、イスラエル側についたのか、と同胞からは中傷を受けることにもなります。


なんとか紆余曲折をへて、
ある親族の骨髄の型が一致するとわかったときの
母親ライーダの身の崩れかたには、胸がしめつけられます。

だからこそ、後で、その母親が言う
「ムハンマドが助かったとしても、エルサレムのためなら自爆テロで殉教してもかまわない」

という言葉がつらいんです。


まったくもって本心じゃないもの。


パレスチナ人として、イスラム教徒として、そして母親としての
複雑な思い、強がり、葛藤。

そんな民族的、宗教的、歴史的な対立とわだかまりを持ちながらも、
1つの尊いいのちを守りたいという思いは、それをも越えるはず。

そう思って
骨髄移植がちゃんと行われるかどうか、はらはらして見守ったのですが、

本筋はむしろ、その治療の後からという気がしました。


実際、ムハンマドが無事ガザに帰っても、空爆や自爆テロは続きます。

それが日常です。


親にとって、わが子ほど尊いいのちはありません。
同じ病気で2人の子を失い、せっかく生かされた息子の命なのですから、なおさらです。

母親の抱える葛藤、カメラの前で強がって見せた姿は

やがて、本心ではなかったということが改めて伝わってきます。

イスラエルによる大規模な空爆があった後、

ムハンマドを助けた当該の病院で働き、
空爆で娘を亡くしたパレスチナ人の医師はこう言います。


「何人もの人を使って、何年もかけて、1つの尊いいのちを救おうとしているのに、
一方で、一瞬にしてそのいのちを奪う、しかも大量に」


この言葉、重すぎて頭から離れません。

そして、この不条理に呆然とするしかありません。

でも、この事実を不条理とか、神の思し召しとして片付けていいのか。

何かできることはないのか、希望はないのか。


将来、ムハンマドと息子を一緒に遊ばせたい、と願う
ソメフ医師の思いにより添いたいと思います。

そして、その後もムハンマドが、元気に生きていることを祈ります。


最後に・・・

この状況は、今日本が置かれている状況ととてもよく似ている気がします。

いのちを救うことは、誰にとっても最も優先すべきことだし、
今、この瞬間もいのちの危険にさらされている人たちが大勢います。

それを助けたいと思う人たちがいる一方で、

自らの保身や体面や、利権や何かのために
いや、それが大義名分となって、いのちをないがしろにし続けている。

まったく異なるように見えても、
起こっている問題の本質はもしかしたら同じなのでは?

と思わずにはいわれない、そんなドキュメンタリーだと私はとらえています。


映画『いのちの子ども』公式サイト


いのちの子ども@ぴあ映画生活
・Twitterでも時々つぶやいています @uereiy


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パレスチナに産まれたひとつの命が、 イスラエルの未来を変える可能性が在ることを。 命についての命題に、 やがて1つの答えを得られる幸福な瞬間を見届けて。 『いのちの子ども』 2010年/イスラエル・アメリカ/90min 監督・ナレーション:シュロミー・エルダール... [続きを読む]

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