『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』新世界のはじまり
★★★★
本物の類人猿は1匹もいないのに、
感情移入できてしまうすごさ
言わずと知れた往年のSFシリーズ『猿の惑星』の、いわばエピソード・ゼロ。
2001年のティム・バートン版もあわせると、全6本のブルーレイがあってびっくりです。
何を隠そう、チャールトン・ヘストン主演の最初の『猿の惑星』と
ティム・バートン監督の『PLANET OF THE APES/猿の惑星』しか観ていないのですが。
(いずれ観ます。)
もともと、そのエピソード・ゼロは、アルツハイマー病の治療薬開発がきっかけとなった
ということに「それって、あり得そうかも」と興味と危機感を持って観たのですが、
それがまさかの、感情移入です。
主人公のチンパンジー、シーザーに。
ラストが近づくにつれ、何だか彼の気持ちがわかるような気がして、ウルルッときました。
特にマルフォイ:トムにいじめられて、人間を見限って、
育ての親であるウィル(ジェームズ・フランコ)に対してとる態度といったら。
ウィルにしてみれば、自分が育てて、いろいろと教えてきたのに、
あんな態度を取られてしまったら(思春期の子どもが浮かんだ…)
やっぱりちょっと切なくなってしまいますよね。
そもそもシーザーをあんなとこに入れたのは誰だっていう話もありますが。
そこまで失望するに至ったシーザーの心情も想像してしまいます。
決行の夜、ウィルの部屋で、
彼らをそっと見ている姿にも胸が打たれますし。。。
私の大好きなジェームズ・フランコはあくまで添え物。
主役は、あの緑のぽちぽちをつけて熱演していたアンディ・サーキスですね。
そういえば
エモーショナルな部分を前面に押し出したチラシが、一時期
Twitterでも話題になっていました。
感動、する方は多いと思います。
それくらい、表情がリアルなんですよね。さすがパフォーマンス・キャプチャーの名優!
だけど、この映画の本質はもっと切なくて、愚かで、そもそも「人類への警鐘」なんですから、
そこ押しは何だかな〜、という思いはやはりします。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
なお、字幕監修をされた京都大学霊長類研究所所長の松沢哲郎教授の
「チンパンジーは、猿ではない。ヒト科の生き物です」というお言葉に
チンパンジーに対する敬意を感じましたので
タイトルこそ猿ですが、本文中では、類人猿やチンパンジーと記したいと思います。
人間と、チンパンジーと、ゴリラと、オランウータンは
遺伝情報にわずかな違いしかない、同じヒト科の仲間なのですから。
また、原題「RISE OF THE PLANET OF THE APES」の APES は類人猿のことで
ニホンザルのようなMONKEYとも区別されるそうです。
いただいたプレスに挟まれていた松沢教授の推薦文、こちらにこそ
とても感銘を受けました。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
実は、チンパンジーを使った
医療感染実験へのアンチメッセージでもある
ウィルは、アメリカの超大手製薬会社の科学者。
遺伝子治療によってアルツハイマー病を治したいと、一心に思ってるんです。
アルツハイマーなのは、父親チャールズ(ジョン・リスゴー、ちょっと惚けた、独特の表情をさすがにうまく出していました)。
しかし、この映画での一番の罪は、父親で治験したウィルでもあるんですよね。
それと製薬会社のCEO。
治したい! その気持ちはわかりますが。
でも、あの一歩は絶対に踏み込んではいけないものだと思いますし、
この映画の設定自体が、実際にあってはならないことだとも思っています。
先の松沢教授によれば、人間とチンパンジーは
遺伝子レベルでは約98.8%も同じだけれども、
免疫系や抗体のでき方などには違いがあるようなのです。
例えば、HIVには感染してもエイズを発症しなかったり、C型肝炎ウイルスに感染しても
肝機能は悪化しなかったり。
そのへん、ちょっとこの映画の肝にも近づいてしまうのですが、
似ているからって、人間の病気を治すためにそんなことしていいのか、という
倫理的問題への答えが、ここにはあると思いました。
そういえば、チャールトン・ヘストンも晩年はアルツハイマー病でしたね。
もしや、オマージュ?
マイケル・ムーアの『ボーリング・フォー・コロンバイン』で
全米ライフル協会会長として出て、怒ってインタビューを途中で終えてしまったのが
遺作となりました。。。
↓効果は幻想に過ぎない?
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