『サラの鍵』時を越えて、つながる2人の女性
★★★★★
銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
過去ー現在ー未来、遠い昔のようでいて
つながっている、このいのち
観たのは12月に入ってからの試写会でしたが、
今年最後に、たいへん心を持っていかれた映画となりました。
『ブラック・スワン』みたいな、圧倒的な強烈な持っていかれ方ではなくて、
じわじわ、じんじん、しんしん、という具合でしょうか。
1942年のパリ。
『黄色い星の子供たち』という映画を観るまで知らなかった
悲しい出来事がありました。
ナチスの顔色をうかがうフランス政府は、自ら
フランスに住むユダヤ人たちを一斉に、強制的に検挙したのでした。
通称、“ヴェルディヴ事件”。
夜中に鳴り響くドアの音、
弟とはしゃいでいたサラ(メリュジーヌ・マヤンヌ)は、
ただ事ではないと、
とっさの判断で、弟を納戸の中に隠します。
その鍵を握りしめて連行されるサラと、パパとママ。
すぐに戻れるはずと信じて。
『黄色い星の子供たち』を見たばかりだったので、
それからのヴェルディヴ(冬季競輪場)の内部や
強制収容所のくだりは、知ってはいても胸が苦しくなりました。
でも、苦しくて、つらくて、悲しいだけじゃないのが、
この映画のすばらしいところなんですけど。。。
<ちょっとネタバレしています>
一方で描かれる、現代のパリに住むアメリカ人のジュリア(クリスティン・スコット・トーマス。
TV放映された『M:I』観ていたら、すぐにやられちゃうスパイでしたけど、)の話
夫と娘と住むはずだったアパートに、
かつて、サラの家族が住んでいたことを知ります。
以来、サラの人生を巡り、真実を知ろうとするジュリア。
ヴェルディヴ事件のことを知って、
ホロコースト記念館にも出向き、衝撃を受けます。(そして、私も)
くしくも、45歳にして妊娠が分かったジュリア。
彼女の人生そのものも変容していくことになるのです。
この現代のジュリアの物語と、過去のサラの物語の織り交ぜかた、
とても自然で、絶妙でした。監督の手腕なのでしょうかね。すばらしい。
混乱せず、それぞれの物語に没頭して観ることができました。
そして、思います。
この2つの物語は、この2人の女性は、いったい、どこで交わるのだろう。
ラストに向かって期待が膨らんでいくのですが、
その手前にある衝撃…。
あの瞬間は、今年100本以上観た中でも、最も緊迫して、ハラハラした
瞬間だったかもしれません。
サラの人生っていったい、何だったのでしょう…。
彼女は毎日、何を考えて生きていたんでしょう…。
父や母や、多くの人たちが亡くなったことは、彼女はいつ知ったんでしょう…。
自分を責め続けた20数年間の人生。
今、ヴェルディヴがあったところには、フランス内務省の建物が建っているそうです。
そこには「道行く人よ、忘れるな!」と記された碑もあるとか。
サラに思いを馳せるジュリアは、新たないのちを育てることを決意します。
何とも皮肉なものですが
人類史上から見ても、とても悲しい、むごい出来事があったとしても、
その中を生き抜いてきた人たちがいて、今があるんだと思わされます。
確かに、深い悲しみの記憶は残りますけれども、
おいおいと泣く“あの人”と一緒に、私も涙しましたけれども、
観終わった後には、何だか不思議な温かさが心に残りました。
サラ役のメリジューヌ・マヤンスは、あの齢にして本格女優だわ…うん。
↓全世界300万部のベストセラーの原作、長編ですが、ぜひ読みたいです
↓こちらのほうが、より史実に基づいているかもしれません。
メラニー・ロランが演じた看護師も証言しているそう。
・Twitterでも時々つぶやいています @uereiy http://twilog.org/uereiy
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» 【TIFF 2010】『サラの鍵』 (2010) / フランス [Nice One!! @goo]
原題:Sarahs Key / ELLE SAPPELAIT SARAH
監督:ジル・パケ=ブレネール
原作:タチアナ・ド・ロネ
出演:クリスティン・スコット・トーマス メリュシーヌ・マイヤンス ニエル・アレストラップ エイダン・クイン
公式サイトはこちら。(2011年12...... [続きを読む]
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» 『サラの鍵』:第18回大阪ヨーロッパ映画祭 [だらだら無気力ブログ!]
素晴らしくて見応えのある作品でした。 [続きを読む]
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11-86.サラの鍵■原題:Elle sappelait Sarah(英題:Sarahs Key)■製作年・国:2010年、フランス■上映時間:111分■字幕:斎藤敦子■料金:1,800円■鑑賞日:12月17日、新宿武蔵野館(新宿)□監督・脚本:ジル・パケ=ブレネール□脚本:セルジュ・...... [続きを読む]
» DVD:サラの鍵 ヴェルディヴ事件を追う女性記者が、少女サラを通して辿り着く真実とは。 [日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜]
1942年、ナチス占領下のパリ。
ユダヤ人一斉検挙がフランス警察によって行われ、競輪場に集められ迫害を受けた後、収容所に送り込まれ 死に追いやられていた。
この重い事実をネタにした映画(ヴェルディヴ事件)
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rose_chocolatさん、こちらこそいつもありがとうございます。
>幾層にも深く考察が可能で、しかも今の私たちも共感できる映画でした。
本当ですね!こんなにも心に響く映画を、この年に観ることができてよかったと思います。
また来年もよろしくお願いします!
投稿: uerei | 2011年12月31日 (土) 01時28分
こんばんは! Twitterではお世話になってます (*^_^*)
ブログお持ちだったんですね。 またお邪魔させていただきます。
メリュシーヌ・マイヤンスちゃんは名演技です。 これからが楽しみです。
幾層にも深く考察が可能で、しかも今の私たちも共感できる映画でした。
投稿: rose_chocolat | 2011年12月29日 (木) 19時52分