『TIME/タイム』イズ・マネーの世界にようこそ
★★★3.5
『ガタカ』にはかなわなくても
独特の世界観に観客を誘(いざな)う
監督・脚本・製作を『ガタカ』『トゥルーマン・ショー』の
アンドリュー・ニコルがつとめるということで
かなり期待度を高くして観ました。
私は、まあまあ、楽しめたかなと思うのですが、
あまり評判はよくないようですね。
まず、この映画独特の設定を序盤で飲み込んで、受け入れていないと
やっぱりその後
ついていくのは若干難しいかもしれません。
すべての人間の成長は25歳で止まる。
左腕に埋め込まれたボディ・クロックと呼ばれるデジタル体内時計が
25歳になった瞬間から、その後の生きられる時間(余命)を刻み始める。
<時間>が通貨の代わりになる。
世界は2分化され、
富裕ゾーンの人々は働く必要がないほど通貨=<時間>を持て余す一方で、
スラムゾーンの人々は、労働によって通貨=<時間>を稼がなければならない。
例えば、スラムゾーンに住む者がコーヒーを1杯頼むと、
ボディ・クロックから、チャカチャカ、チャカチャカと4分差し引かれ、
その分、自分の余命が4分縮んでしまうという、
その4分は富める者の懐へ貯まっていくという、そういうことなんです。
なんという斬新な発想。
なんというオリジナリティ。
まさにタイム・イズ・マネーの世界。
富める者だけが永遠に生きられるという、究極の格差社会を描き出しています。
主演の、『ソーシャル・ネットワーク』のジャスティン・ティンバーレイクはじめ、
『ダークナイト』のキリアン・マーフィ(ちょっとお兄さんだけど)、
『アイ・アム・ナンバー4』のアレックス・ペティファー、
「ホワイトカラー 知的犯罪ファイル」のマット・ボマー、
「マッドメン」のヴィンセント・カーシーザーと
みんな25歳という設定なので、若きイケメン度が高いのはうれしいところですが。
この映画を観ると、時間に対する意識が変わりそうです。
いつも時間に追われて、アタフタと小走りしたり、
時計ばかり気にしているのは、貧乏症なのかもしれません。
余裕というものは、やはり懐具合から生まれるのでしょうかね・・・。
とはいえ、100万年分も余命(時間)を持っていたって、
シルビア(アマンダ・セイフライド)のように
毎日が「なんか、つまんな〜い。どっかにおもしろいこと、な〜いかなぁ〜」
という空虚感ばかりに支配されてしまうのだったら、
果たして、長く時間があることだけがよいことなのかどうかも疑問です。
疑問といえば、もう1つ。
老化遺伝子を抑制させ、ボディ・クロックや、
<時間>を人同士でやり取りする仕組みがあるほどの進んだ“近未来”なのに、
車や建物など、そのほかの部分ではあまり進歩がないなと
気になってはいたんですが、
そこには監督のこだわりがあったようです。
スラムゾーンに住む者は、毎日をやりくりして命をつなぐのが精いっぱいで
新しいものを生み出す時間が、文字どおり、ない。
だから、スラム街によくありがちな落書きさえも、ない。
体制に逆らっている時間さえも、惜しいから。
一方、富裕ゾーンに住む者は、明日も、あさっても、
今すぐに新しいものを生み出す必要性を感じない。
この設定は、監督のアイデアらしいですが、
なるほどです。
納得しました〜。
不老不死、永遠の命(時間)というものは、
映画の世界でも、インディ・ジョーンズや
ジャック・スパロウや黒ひげが
不老不死を求めて冒険していますが、
それを永遠に求め続けているから、物語になり得るのであって、
永遠の25歳のままで、
時間があり余るほどだったなら、
そこには自己の成長とか、自己実現とか、創造性とか
そういったものがなくなってしまうのではないか。
そんなメタファーが、この映画には込められているようにも思います。
富める者が貧しい者から搾取して、長生きするということも含めて、
やっぱり、意外と深〜い作品だなあと私は思うのです。
↓とはいえ、人間ドラマとしての見応えはやはりこっちかな。
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マット・ボマー、アレックス・ペティファー出演
アンドリュー・ニコル監督、
109分、2012年2月17日公開
2011,アメリカ,20世紀フォックス
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