人間、いくつになっても『人生はビギナーズ』
★★★★★
自分に正直に生きることをおそれない。
いくつになっても、みんな人生の初心者なのだから
妻が亡くなって初めて「私はゲイだ」とカミングアウトし、
自らに正直になろうと決めた父親と、
愛することに臆病な息子の、人生賛歌ですね、これは。
邦題、「恋はビギナーズ」とかじゃなくて本当よかった。
最後、タイトルロールがどんっと出てきたときに、実感しました。
「人生は」だよね、うん。生き方で。
生き方全般で。
恋だ華だも全部ひっくるめて。
ナイスです、ファントム・フィルムさん。
それにしても
『サムサッカー』のときに「何じゃ、こりゃ!?」と衝撃を受けた
マイク・ミルズ監督作品、
ゲイをカミングアウトする、主人公の父親役に
最年長のアカデミー賞助演男優賞受賞者、クリストファー・プラマー、
『パーフェクト・センス』『ゴーストライター』と出演作が続く
ユアン・“オビ=ワン”マクレガー
『オーケストラ!』で、なんて可憐でキュートなんだと
思ったメラニー・ロラン
ときて、
Twitterなどでもとても評判がよかったし
かなり期待値のハードルを上げてしまっていたのですが、
十分にその期待を裏切らない、
おもしろい、見応えのある作品となりました。
確実に今年のランキングに入るでしょう。
なぜ突然、そんなことを言い始めたかというと、
父親自身も末期がんに冒されていたから。
どうして、人間というものは、正真正銘のピンチにならないと
正直になれないものなのでしょう。
いや、正真正銘のピンチに陥ったときでさえ、
正直にはなり切れないことも多いのかもしれませんが。
連れ合いを看取って、
自身も末期がんを宣告されて初めて
自分に正直になる、というのは、やっぱり仕方のないことなのでしょうか…。
自分に正直に、傷つくことをおそれずに生きることは、言うほど簡単なことではありません。
実際にはなかなかできないのが常だから、
誰しもそう感じながら、大人になり、親になっていくのかもしれませんが
でも、主人公のオリヴァーの場合は、
最後の最後になって「パパ」が教えてくれたんだと思います。
おそれるな。
自分に正直に、
自分を解放して。
そうすれば、きっと人生はもっとハッピーに輝くさ。
ゲイをカミングアウトしたパパ、本当に輝いていたものね。
本当に幸せそうだったものね。
自分の人生を生きている、という実感が一番していたんじゃないかと思います。
ああ、人生を終えようとするときにも、
まさにパパはビギナーズだったんだなと、
そうだよな。今、生きていることだって、
これから迎え入れる自分の死だって、まったく持って初めてのことなんだから
毎日毎日の初めての経験に心躍らせていたんだなと、
そう、しみじみ、ジ〜ンとしているところに
タイトルの「Beginners」と、絶妙のタイミングで入って、これがまた最高。
この映画、好き!と思った瞬間でした。
そして、
ここでもまたジャック・ラッセル・テリア!
ブームになってしまうのでしょうか…。
オリヴァーだけでなく、この愛犬もまた
グリーフワーク(喪の作業)の真っ際中というのも、切ないです。
↓17歳になっても指しゃぶり(Thumb Suck)がやめられない少年を描いた、監督のデビュー作。
少年の依存の対象は親指から催眠術、やがては抗うつ剤になり、マリファナになっていく…。
↓ユアンがパパを看取っているのが、どこか真逆バージョンのように
感じられて、思い出した作品です。
↓メラニー・ロランが実在した看護師を演じました。
『サラの鍵』と同じ、ユダヤ人一斉検挙がテーマ
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