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2012年5月22日 (火)

『別離』思えば思うほど、離れていく

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別離


★★★★4.5


遠くて近い、イスラムの国
近くて遠い、思い人の心

5月26日(土)〜シネマート新宿、6月4日(土)〜オーディトリウム渋谷ほか続映決定
詳しくはこちらを。


先週になりますが、ようやく、ようやく見てきました。

アカデミー賞外国語映画賞、ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞、ベルリン国際映画祭金熊賞などなど、各賞を受賞しているイランの映画です。


冒頭、裁判所に離婚の申し立てをする1組の夫婦の、それぞれの主張から始まります。

国外移住の許可をようやく取った妻、
1人娘のために家族で外国に行きたいと考えています。

ですが、その夫は、アルツハイマーを患っている父を置いて外国へなど行けるわけがないと突っぱねます。
もちろん娘を外国に行かせることも許しません。

妻は、ならば離婚するしかない、と語気を強めます。

この映画で起こっていることは、もちろん、イスラム教の国という決定的な違いはあれど、

介護、離婚、格差、失業、借金、うつ・・・

なんとも、私たちと近しいテーマが描かれています。


生きていくことの普遍性を感じられる良作です。

1人1人、みんなそれぞれがかかえている。生活していくために身を削っている。誰しもが誰かの子であり、親であり、


宗教に敬虔な国で、信仰に真摯な人なら、なおさら。

罪深いことはしたくはないが、誰かを守るために
真摯にいきようと思えば思うほど、
生きるために必死になろうとすればするほど、
生きにくくなってしまうことがある…。

主に登場するのは、
先の夫婦、テヘランで銀行に勤めるナデルと、英語教師のシミン。

最初にシミンが自分の車を運転しているので、ちょっと驚きます。
だんだん、彼女の考え方や服装からも、
一家は経済的に裕福であり、シミンは割合と世俗的・進歩的な女性であることがわかります。


一方、父の介護のためにナデルが雇ったラジエーは
外出時の服装にも気をつかう、敬虔なムスリム。

4歳の娘を連れてバスを乗り継いで、ナデルの家にやってきます。

バザールで働いていた夫ホッジャトは失業中。
彼に黙って、介護人として働くことにしたのです。


初日から、粗相をしてしまったナデルの父。
ラジエーは宗教家と連絡を取り、
シャワーや着替えのために夫以外の男性に触れることの許可を求めます。

わずか4歳の娘が「パパには言わない」と言うことから、
どれだけ信仰というものがこの家族に染みついているかわかります。


ある日、ラジエーが目を離したときに、ナデルの父は家の外に出てしまうのですが・・・。


この映画では、1人1人、それぞれがみな抱えているものがあります。

生きていくために身を削っています。

子であり、親であるために、
彼らを守るための、うそをつきます。

よかれと思ったことをしようとします。

その一方で、真実を求めようとします。

エゴの押しつけ合いと葛藤の中で、お互いに理解と信頼を求めていきます。


しかし、相手を思っていても、お互いを遠く感じ
すぐ近くにいても、もう心は完全に離れている。

誰かのために真摯に生きようと思えば思うほど、
生きるために必死になろうとすればするほど、

余計に、生きにくくなってしまうことってあるのですね。


そんな大人たちの言動を、そばで見てきた
ナデルとシミンの11歳の娘・テルメーは、ラスト、いったいどんな決断をしたのでしょうか。

とても気になりますね。
何となく、わからなくもないけど。


別離 - goo 映画

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