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2012年7月17日 (火)

『ぼくたちのムッシュ・ラザール』いのちの教室

Photo


ぼくたちのムッシュ・ラザール


★★★★★


こどもとっての学校は
生きるための場所であれ


「いのちがもったいない!!!」

小学校時代、初めて太平洋戦争について学んだときの子の作文の1節です。


いのち。

大事にしていきたいです。


じぶんのいのちも。
ともだちのいのちも。
大切なだれかのいのちも。

いま、この映画を観ることは、大きな意味があると思っています。


カナダ・ケベック州のモントリオール。
移民が最も多い州の大都市だけあって、

フランス語が飛び交ってはいますが、たしかにいろんなこどもたちがいます。


いつものように始まる学校での朝、

その日、牛乳当番だったシモンは、みんなより早く行って、
クラスの分の牛乳を受け取り、教室に運んでおかなくてはなりません。

ところが、教室の中を覗いたシモン…。

牛乳びんをぶちまけ、走って先生を呼びに行きます。

先生たちは、登校して来た子どもたちを、追い立てるようにまた外に出そうとします。

ただ1人、シモンを心配した仲良しのアリスだけは、
散乱した牛乳びんに気づき、思わず教室の中を覗いてしまいました。

シモンと同じ光景を見てしまいました。




その日の朝、担任の先生は、教室で、自殺していました。


こどもたちだけでなく、先生、保護者、教室、学校全体に広がる喪失感。


そこへやってきた新任の先生が、アルジェリアという遠い国からやってきた
バスール・ラザール先生でした。


どこか野暮ったいけれど、やさしげ。
頼りなさそうだけど、怒ったら怖そうでもあります。


円形状の机の並び方をわざわざ直線に並べ変えたり、
11、12歳のこどもたちにはちょっと難しそうな古典を教材にしたり。


おいおい、だいじょうぶか、この先生。。。


いやいや、それより、こどもたち、だいじょうぶか。。。


学校側は、こどもたちの“心のケア”に追われます。

いろいろと文句を言う保護者たち(心配してるんですけどね)。

スクールカウンセラーがこどもたちの話を聞いてくれるそうですが


まるで腫れ物にさわるみたい。

自殺した先生の話はタブーです。


しかも、先生たちは、こどもには“触れてはいけない”んです。

虐待ととらえられてしまうから。

誤解を生んでしまうから。

かえって、こどもを傷つけてしまうから。


それでも、アリスは、ラザール先生のおかげで

あの日から抱えていた、もやもやした感情、先生の死をどう感じているかを、
作文にすることができました。

それを読み、全校生徒に配布したほうがいいというラザール先生の意見を

校長は「これ以上、波風を立てないで」と突っぱねます。


何じゃそりゃ。


問題を起こしたくなくて、大きくしたくなくて、

火種になりそうな芽を先手、先手で摘みとる学校側の姿勢。

なんだか既視感がありますね。


半年近く、季節が冬から夏に変わるまで、

1人で心に思いを溜めてきたシモンが、ある日、クラスでそれを爆発させるシーン。

「自分のせいだ」と思い悩んでいたシモンの感情の吐露が、胸を打ちます。


ラザール先生もまた、テロによって妻と2人の子を失うという

大きな悲しみを抱えてカナダにやって来たのですが、

シモンの感情の吐露は、カウンセラーの前ではなく、

同じようなグリーフ(悲嘆)を知る

ラザール先生のいる教室だから、できたことだったのではないでしょうか。

しかも、仲良しのアリスが放った、ひと言がきっかけになっています。


教室はまちがうところだ」という絵本がありましたが


ラザール先生に言わせれば、

教室は、友情や思いやりにあふれた場所であり、

けっして絶望を語るための場所ではないんです。


このセリフ、今、本当に、ずっしりときます。


結局は

答えが出たのかもわかりません。こちらに想像を委ねています。


ただ、あの激しい思いをクラスみんなが受け止めた日から、

こどもたち、それぞれの心に深く沈んでいた重たい石のようなものが

少しでも軽くなっていることを願うばかりです。


そう、
こどもたちにはやがて笑顔が戻っていくだろう、と信じられるラストです。


こどもにとって、

学校にいる時間はとても長く、まさに生活そのもの。

それでも大好きだよ、と受け止めてくれる存在があるのならば、

それだけでかけがえのない場になります。


そういう場であれば、だれかのいのちを軽んじることなど決してできない

と私は思います。

ぼくたちのムッシュ・ラザール@ぴあ映画生活

ぼくたちのムッシュ・ラザール - goo 映画

本作と、公開中の『隣る人』『先生を流産させる会』なども
あわせて観てもいいかなと思います。

『隣る人』の舞台は学校ではなく、児童養護施設ですが、
こどもにともに寄り添い、無償の愛を与える隣にいる人を描いたドキュメンタリーとなっていますので、親として、考えさせられる部分が多分にあります。

8月には、韓国で法を変えるきっかけにもなった
聴覚障がい者学校での悲しい出来事を映画化した
『トガニ 幼き瞳の告発』もあります。


日本でも“トガニ法”のような動き、もしかしたら必要なのかもしれません。

・Twitterでも時々つぶやいています @uereiy twilog
・試写会や来日記者会見の感想もちらほら。
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Healing & Holistic 映画生活

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「ぼくたちのムッシュ・ラザール」★★★☆ フェラグ、ソフィー・ネリッセ、エミリアン・ネロン、 ダニエル・プルール、ブリジット・プパール出演 フィリップ・ファラルドー監督、 95分、2012年7月14日公開 2011,カナダ,アルバトロス・フィルム、ザジフィルムズ (原題/原作:MONSIEUR LAZHAR) 人気ブログランキングへ">>→  ★映画のブログ★どんなブログが人気なのか... [続きを読む]

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