『夢売るふたり』が夢見たもの
★★★★
脳裏にこびりつく、男と女の奇妙な形
いかんとも理解しがたい夫婦の関係
本当に、やばいお話をよく考えるものですね。西川美和監督ったら。
松たか子さん、よく受けたよね。よくやったよね。
阿部サダヲさんが、こうも人たらしだったとは、よく気づいたよね。
夫婦は「運命共同体」などといいますけれど、
そうはいっても、
いざなったら、
女はしぶといし、がめついし、本領を発揮します。
本能を大事にします。
チラシのメインビジュアルのこの写真、
映画をご覧になった方ならおわかりと思いますが
今まで築いてきたものが、すべて、目の前で壊れていくシーンです。
阿部さんの途方にくれた表情に比べて、
松さんのこの、まるで何かに目覚めたかのような、何事かを決意したかのような
むきだしの気持ちの入りようったら。
この目を見たときに、ああ、これは、すごい映画を観ることになるぞ、と思わずにいられませんでした。
だから、生々しいと言われてしまうんでしょうかねえ。
でも、まるで納豆のように、この後引く感じ、嫌いじゃないです。
<ややネタバレがあるかも>
おっとそう来るか!?という場面は、何度も何度もやってきますが、
結婚詐欺を繰り返していたら、
いずれ、出てきますよ。
共に夢を追うはずの妻と一緒にいるよりも、
居心地よくなる場所が。
落ち着いてしまえる場所が。
そんなときにも、いや、そんなときだからこそ、
こっちを突き放すようなアクシデントを起こして、
あいまいな終わらせ方をして
後に引く、モヤモヤした感じを残すんですよね。
これはもはや、西川流といってもいいのかもしれませんよね。
女って怖い。
という男性陣もいることでしょうが、
男だって、ずるいじゃないですか。
やっぱり自分がリードしたい場所、自分を崇めてくれる場所にいたいんじゃないですか。
『ゆれる』のあの兄弟が、
『ディア・ドクター』のあの師弟が
脳裏にこびりついて離れないように、
今度はこの夫婦が・・・
夫婦?なのか何なのか
よくわからない関係の男と女(たち)が頭から離れません。
奇妙な、いかんとも理解しがたい夫婦の形。
それでも一緒にいる、やむを得ない葛藤。
松さんに心底、女優魂を感じました。
その迫力、すさまじかったです。
だまされる女性陣も皆さん、ハマリ役でした。
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uereiさん、こんにちは。
一昨日の拙サイトの更新で、こちらの記事を拙日誌からの直リンクに拝借したので、
報告とお礼に参上しました。
チラシでの目への言及、さすがですね。
僕も松たか子すごい!って、そればっかでした(笑)。
西川作品としては、僕はあまり買ってないのですが、松たか子は絶品でしたね。
どうもありがとうございました。
投稿: ヤマ | 2012年12月22日 (土) 23時54分
rose_chocolatさん、コメントありがとうございました。
遅くなってすみませんでした(__;)
> 女は怖い!って言われているこの映画ですが、裏を返すと、男のずるさ・卑怯さが目についちゃってしょうがないですねえ、
本当に。それもひっくるめてラストがあるんだと思うと、やっぱり男のほうが浅はかであり、
目先の楽しさに溺れやすい、というところに共感いたしますw
投稿: uerei | 2012年9月15日 (土) 08時30分
いつもTwitterではありがとうございます。
>男だって、ずるいじゃないですか。
ねえ、ずるいですよねー(笑) ほんとに。
女は怖い!って言われているこの映画ですが、裏を返すと、男のずるさ・卑怯さが目についちゃってしょうがないです。
投稿: rose_chocolat | 2012年9月11日 (火) 08時07分