『わたしたちの宣戦布告』やがて勝利宣言
★★★★4.5
病気を宣告された子どもの親は
かくあるべきという、イメージをすべて取っぱらう
主演の2人ヴァレリー・ドンゼッリとジェレミー・エルカイムは、俳優同士の元カップル。
2人の間に生まれた子どもが難病を宣告されてからのできごとについて
脚本を書き、ヴァレリーが監督を務めたフランス映画です。
最高にすばらしい作品が、またもやフランスから。
子どもの難病に立ち向かう若いカップルが、人生の困難に立ち向かうシリアスなお話ではありますが、
そういうモノにありがちな先入観といいますか、
イメージや固定観念、偏見とでもいいますか、
同情や憐憫などの、そうしたすべての色眼鏡を取っぱらう、
リアリティのある現実的な見せ方とともに
ポップで、大胆で、若さが躍動してあふれているファンタジーの側面も持ち
前向きさと希望と、ときどきのユーモアにあふれた
青春恋愛映画と相成っています。
わたしたちは、いつから、病いや、死や、あるいは老いに対しても、
はっきりとした隔たりを持つようになってしまったのでしょうか。
それらは、わたしたちの生きている人生の、日常の一部であり、
延長線上にあるのに、
どうして、区別をしたがってしまうのでしょうか。
子どもが病気になったからには、かくあるべきと
いったい誰が決めたのでしょうか。
この映画の中の2人は、そろって病院の玄関先でたばこを吸い、
パーティーにも出かけていきます。
2人の間に起こった現実と対峙するためにはどうしても必要だったと考えれば、
何も言えなくなってしまいますが
それ以上に、それこそが、2人が2人らしくあるための行動であるとしたら、
やはり、そこには何も言えないのです。
2人が2人らしくいる間、両親だったり、友人だったり、
ときにはナースだったりが、力を貸してくれます。
みんなの支えが必要になると、2人は知っていましたし、
そして、その中にあっても、両親や友を思いやる心も忘れてはいませんでした。
毎日は、子どもと一緒に、病院という場所であれ続いていくのですから。
だからこそ
2人は、前向きであろうとします。
「強くなろう」と自分たちに言い聞かせます。
こんなにやさしくて、湿っぽくないところは
フランス映画ならではなんでしょうか。
後味もいいんです。
『100歳の少年と12通の手紙』にも似た
爽快感すら感じてしまいます。
ラストのスローモーション以外は
Canonのスチールカメラで撮ったというだけあり、
ドキュメンタリーのような臨場感もあります。
まるで、自分もその病院にいて、
結果を聞くのを一緒に待っているような気さえします。
何より、病院やそのスタッフに対する大きな感謝の気持ちも、
その中にはたくさん詰まっているようにも見えるのです。
・試写会や来日記者会見の感想もちらほら。 Facebookページにも「いいね!」をいただけるとうれしいですm(_ _)m
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