『ミラクルツインズ』が伝えるライフ・イズ・ミラクル
★★★★
今ここにある、この命こそ
ただ1つの奇跡
肺の遺伝性難病「嚢胞性線維症」(通称・CF)を抱えて生まれた双子
アナベルとイサベルの人生を追ったドキュメンタリー。
幼いころから入退院を繰り返し、
命を脅かす呼吸困難と何度も闘いながら、
お互いを支えにしてきた2人。
年に1度のCF患者が集まるサマーキャンプを楽しみにし、
退屈な入院生活の間は
自分たちの経過を日記にまとめていました。
彼女たちの毎日は、常に病気とともにありました。
そんな彼女たちを救ったのは臓器移植。
日本の2歩も3歩も、いや10歩以上も先をゆく、
臓器移植大国アメリカであったからこそ
彼女たちのミラクルは実現できたんです。
いや、でも、それにしても
何なんでしょう。彼女たちのポジティブさ、明るさは。
「病気が、今の自分たちをつくった」という受容の姿、
ドナー家族に対する深い感謝と思いやりの姿、
積極的にいろんなスポーツにチャレンジしている姿に
ある“強さ”を感じずにはいられません。
水泳にしても、登山にしても、希望の大学に行くにしても、
誰かを愛するにしても、何をするにしても
まず体が健康でなければ始まりません。
そのことを、2人はイヤというほど身に染みて知っています。
また、この映画でCFという病気を知りましたが、
2人は、まだ10代のサマーキャンプの仲間たちが
次々と亡くなっていくのをイヤというほど目の当たりにしたはずです。
「なぜ、私が…」
人は病になると、そう思わずにいられないのかもしれませんが、
奇跡といえる移植をへて、彼女たちは、
なぜ自分たちは生きているのか。生かされているのか。
「なぜ、私たちが…」と
時に自分を責めるように、何度も考えたんじゃないでしょうか。
命に対する避けられない葛藤について
とても真剣に考え抜いてきたと思います。
とても、とても真摯に向き合ってきたと思います。
なぜ、私が…。
例えばの話、大地震にしても関東で起こる可能性は十分にあるし、
どこにどう逃げたかが運命の分かれ目になってしまうことだってあります。
それでも、ただ1つ、はっきりしているのは
生かされた命は、今もなお生きているということ。
生きていること自体が、それだけで何事にも替えがたい奇跡なんだということ。
だから、その命を生きよう。まっとうしよう。
健やかであることを大事にしよう。
今日という1日があることに感謝しよう。
シャボン玉に息を吹き込んだとき、透明な球体が空中を上っていくことに
希望を見い出そう。
ものすごいものを数多く乗り越えてきたミラクルツインズだからこそ
その語り口には、十分な説得力があります。
そんなわけなので、
臓器移植が、なぜ日本でこうも遅れているのかを問題提起しながらも、
日本人の死生観と、生命への畏敬の念にどうおり合いをつけていけばいいのか
考えさせられながらも、
なぜだか元気がわいてくる
とっても前向きになれるドキュメンタリーとなっているのでした。
↓2人が祖国・日本を愛してくれているのもとてもうれしいですね
« 『終の信託』に必要なものとは? | トップページ | 『その夜の侍』の悲痛な喪失が昇華するとき »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント