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2013年3月21日 (木)

『メッセンジャー』が伝える見えない犠牲

Photo

メッセンジャー (2009年製作)

★★★☆☆

彼らが伝えるのは

消えることのない悲嘆のはじまり


イラク戦争開戦から10年にあたる今週にぜひとも観ておきたい1本でした。

もし、主人公の上司役ウディ・ハレルソンが

第82回アカデミー賞助演男優賞・脚本賞にノミネートされていなかったら、

第59回ベルリン国際映画祭の脚本賞&平和賞でなかったら、

DVDスルーだったかもしれない珠玉の作品。

82回のアカデミーといえば『ハートロッカー』が席巻した年でもありますが

これは、イラク戦争のみならず、

戦争の“傷跡”や“犠牲”を語る映画として、また1つ
エポック的な作品になるんじゃないかな、と考えています。


このメッセンジャー、何を伝える役目があるのかというと、

戦地に行った子や夫の帰りをまちわびている家族の自宅まで出向いていき
その兵士の戦死について第一報を、
親や、妻という、そのもっとも近しい近親者に対して
伝えることなのでした。

“負傷しながらも仲間を救った英雄”として帰還したウィル(ベン・フォスター)は

その過酷なミッションに向き合うことが、
グリーフワークの扉を開けることになったのでした。


これがねえ…つらい、なんてもんじゃないですよね。



文字どおり、人を奈落の底に突き落とす、残酷で、きつい任務ですよね。

最初にこの任務について命令されたとき、

ウィルは「悲嘆カウンセリングを受けておりません」と戸惑うのですが、

この任務にほしいのは

何事にも動じない強いキャラクターの持ち主。

危険をかえりみずに、戦闘のなかで仲間を救ったお前だから、

この任務に選ばれたのだというのです。

先輩のトニー(ウディ・ハレルソン)は長らく、この任務についてきたベテラン。

戦死した兵士の最近親者には決して触れるな、というルールにのっとって、

どこまでも冷静に、徹底して事務的に対応するような人物でした。

それがおそらく、相手も、自分も、それ以上傷つかずにすむ

最良の方法だと、信じていたんだと思います。


ただ、実際はそんな一筋縄ではいかないことが、
1件1件、任務を終えるごとにわかってきますし、
ウィルはウィルで、夫の戦死を告げた後に
「伝えてくれてありがとう。大変な仕事ね」と
握手まで求めてきた、未亡人が気になるようになってしまいます。。。



先般の『遺体 明日への十日間』とは全く異なる役目ではありますが、

“肉親の死を伝える”人である、メッセンジャー。

そんな人たちに対して、いったい、どんな態度が取れるというのでしょう。

悲しみと怒りとを爆発させられて、罵倒されこそすれ、

こればっかりは感謝されることなんて、ないんじゃないか。

戦地に送り出したことだけでも、相当なショックであるのに

彼らの日常の喪失の大きさったら、なかったんじゃないかと思います。


本当に、不毛だ。
伝えられた家族の今後が目に見えるようだ。

一度、その中に沈んでしまったら、笑っていても悲しい。
子どもが何をしても。おいしいものを食べても。
悲しみの中で、笑い続け、酒を飲み続け、快楽をむさぼり続ける、しかない。

戦争帰還兵の、心の傷については
イラクでの爆弾処理班を描いた『ハートロッカー』でも、
帰還兵のPTSDを描いた『告発のとき』でも、
『マイ・ブラザー』(アフガン戦争)や、
『グラン・トリノ』(朝鮮戦争)、
ベトナム戦争では『帰郷』『ディア・ハンター』『7月4日に生まれて』、
太平洋戦争では『父親たちの星条旗』や「ザ・パシフィック」
などなど、枚挙にはいとまがありません。


帰還兵。


一見すると、彼らはいたって普通、それどころか、
いまだ強靱な精神の持ち主だと思われてしまっているということ。

PTSDなどもそうですが、
その“傷跡”は、はっきりと目には見えない、
表には出てこないという事実が、この映画からはずいぶんと明確に見えてきます。

戦場のシーンが一切なくても、見えない“傷跡”が感じられるのです。


私の祖父は、物心ついたときから目と耳が不自由でした。

南の島で死にかけて、でも帰ってきたのですが、本当に多くは語らなかった。

けして自分からは、そのことを話さなかった。

常に大きな、大きなブラックホールの中にいたんじゃないかと、改めて思います。

毎日毎日、少しでもそこから浮き上がれてこられるのなら、それでいい。

そんなふうに、過ごしていたんじゃないかと思うのです。



メッセンジャー - goo 映画

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