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2013年3月13日 (水)

『おだやかな日常』を、ただ取り戻したいだけ。

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おだやかな日常 ODAYAKA

★★★★☆


少しもおだやかでない

原発事故後の日常を描く

 

英語字幕が入る、日本映画です。
日本という国(の国民性や危機管理のあり方)を知ってもらうための
世界に向けてのもの、でもあるのです。

物語はあの、耳をつんざく緊急地震速報の警告音から始まりますが、

描かれている日常は、まったくもっておだやかなものではありません。

2011年3月11日の東日本大震災と、その直後に起こった
東京電力福島第1原子力発電所の事故の後の日常は、
リアルでも、まったくもって、おだやかではありませんが

だれでも「おだやかな日常」を目指しているんだ、
そこを目指してるからこそ、
日々奮闘しているんだ、ということを
改めて気づかせてくれる映画ではありました。

前半はまるで、ドキュメンタリーでも観ているみたいな錯覚におちいりました。

「え? 産地とか気にしてんの?」言われたことあります。
ガイガーカウンター買いました。測ってました。
「食べて応援」には、大反対です。
「海水浴に行くなんて…」と思ってました。

それって、おかしなことですか。

放射脳ですか。

当たり前のことを口にすれば、裏切り者ですか。
子どもの命を、家族の命を守ろうとすれば、だれかを傷つけてしまうのですか。

どちらが、自分勝手?
どちらが、不安をあおっている?

ネットを見ても、リアルにおいても考えてきたことが
スクリーン上に表れていました。

子どものことを心配するあまり、
主人公・サエコは、幼稚園のママたちから
「不安をあおらないでよ」と逆に責められてしまいますが

私は、この3人3様のママたちがものすごく気になりました。

もっとも厄介(?)に思われがちなのは、
渡辺真起子さんが演じた、
夫が電力会社の下請けをしているというママではないでしょうかね。

サエコを追い立てる急先鋒。
でも、実は自分でも不安で仕方ない。魚の産地が気になる。
夫に、そこへは行ってほしくない。
しかし、それを表立って言うことなどできない、というママです。

しかし、私は、実はもっとも心配というか、タチが悪いと思うのは
真起子ママ(役名は典子)の言うことに
「そうよ、そうよ」と同調するだけのママ、美加。

情報をうのみにするというのか、
自分では何も知ろうとしていないというのか、
自らの心配や不安に気づかないフリをしているのか

わかりませんけれども…。

もう一方の、表立って声は出せないけれども、
気にかけているママ、洋子。
彼女のように、気にしたほうがいいことなんだと、
わかっているほうがよっぽどいいと思うんです。意識として。

やがて、典子は黙って、どこかに越していってしまうかもしれないし、
洋子は人知れず、官邸前や明治公園にいるのではないか、という気さえします。

そうやって、あの3人は、それぞれの立場の象徴でもあるなと思いながら
観ていたわけですが、

「何事もなかった」ようにして、これまでと同じように
「おだやかな日常」を送ろうとしている美加のような存在が、
一番ことを厄介にさせているのかもしれないし
そして、おそらくはもっとも大多数な人たちなのかもしれない、
国から、社会から、そうであってほしいと望まれている存在かもしれない
そう思わずにはいられませんでした。

もう1人のヒロイン・ユカコの、夫タツヤの勤務先の上司もしかり。
彼のような意見が、先の選挙を後押しすることになってしまったわけで。

それでも、
もう取り返しのつかないことを、
ただ責めるだけではなくて(もちろん責めたいけれども)

私たちは、前を向く。

「きっと、守ってみせる」と、前を向く。

そんなヒロイン2人の姿には大変共感することになりました。

できるかぎり、私たちが「守ってみせる」
できるかぎり、「おだやかな日常」を取り戻してみせる

それは、多くのママたちの代弁だろうと思うのです。
だって、日常は今も続いているんですから。これからも続いていくわけですから、
とにもかくにも、前を向いていくしかないんですよ。

だから、ここには希望があります。未来が、見えます。

公開規模はけして大きくはないですけれども、
まだまだ全国順次公開中。
より多くの方に観ていただきたい映画だと思っています。

そういえば、観終わって、
なぜ、ユカコの夫婦は絆というか、つながりというか、思いやりやいたわり、
信頼関係が強固だったか、を考えたとき
いのちの喪失の体験とは、
いえ、いのちにかかわらず、何かを喪失するということは
いとも簡単に、とても突然に、かつ不条理に、誰にでも起こり得るということを
お互いが知っていたからこそだったんではないか
「おだやかな日常」が一瞬にして消えさる
喪失の体験を、ともに抱えていたからこそだったんだと気がついたのです。
同様に、この今の日本に住む私たちも、
共通する巨大すぎる喪失を抱えているはずだと思うんですけれど、
どうも今ひとつ、つながり?絆?が薄っぺらく、
言葉だけが1人歩きしているような気がするのは、なぜなんでしょうか。

おだやかな日常 - goo 映画

↓より現場に近いところで起こったことと、ちょっと離れた首都圏で起こったことはやはり違う!?

↓サエコ役、杉野希妃さん出演作。未見なんです。がぜん観たくなりました。

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コメント

rose_chocolatさん!こちらにもコメントいただきありがとうございました!
私も、もし子どもが幼稚園時代とかもっと小さいころだったら、
どうしていただろうと思いますね。割と意識の高い方が多いとは思うんですけれど。
日本人的性格というのか、「出る杭は打つ」風潮と事なかれ主義を真っ正面から描いていて
そこに好感が持てますよね。

TBお返し遅くなりました。なかなか最近ブログまで手が回らず・・・。

おだやかな作風っぽく見えますが、全く違いますよね。
>放射脳
私はこの言葉が本当に嫌いです。どうするかは各人のチョイスなのに、安全を求めることの何がいけないのかと思います。
「子どものために」という言葉を隠れ蓑にして、母たちの見えざる戦いが行われている訳で、もし自分の子が小さかったら、目の当たりにしないといけなかったでしょう。
真実は何か、本当に守るためには何をすべきなのか、その人の選ぶことだと思うのです。そこに他人が介入したり中傷したりという現象が起きていること自体が息苦しいことですね。この映画では、その嫌らしさが正面から描かれていたことが良かったと思います。

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