『パーフェクト・センス』不完全な感覚、完全な融和
★★★★☆
新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
パンデミックの中で始まった
完全なるラブストーリー
主演は実力派ユアン・マクレガーと、『007/カジノ・ロワイヤル』のヒロイン、エヴァ・グリーン。
ですが、万人受けはしないと思います。
“SOS”と命名された原因不明の奇病が、世界中に広がっていくのですが、
『コンテイジョン』みたいな、パニックと恐怖の蔓延というわけではなく
『28日後...』
みたいな、感染者に襲われたら最後というようなホラー要素もないのですが
たいへん怖いのです。
何が怖いかって、
この映画に出てくる“SOS”とは、直接的に命を奪わうわけではないけれども、
嗅覚、聴覚、視覚といった人間の五感を次々と奪い去っていくものだから・・・。
それがまず、症状として表れるのは、突然の「悲しみ」の到来。
どこもかしこも、誰も彼もが、ふいに立ち止まり、
生涯の中で遭遇したもっとも悲しい出来事に支配されてしまって、
おいおいと涙を流し始めるんです。
そして、なぜか奪われていく嗅覚。
においが分からなくなるってどうなんでしょうね。
嗅覚ぐらい、大したことない、なんてことはありません。
大好きな人のにおい、おいしそうな食べ物のにおい、
おひさまのにおい、いやしをくれるアロマのにおい
分からなくなったら、それはそれでイヤです。
特に、主人公のマイケルはレストランのシェフですから、仕事にも支障をきたします。
一方、スーザンは、重症嗅覚障害症候群、通称“SOS”と名付けられたこの病気の
原因究明を迫られる科学者でした・・・。